資産運用をおこなう場合、バカにならないのが手数料です。いやバカにならないというよりも長期に資産運用をおこなう場合は、手数料すなわち運用コストの差が決定的に大きな運用成果の差になってあらわれるといってもいいでしょう。ただし、株式の売買手数料などは自由化されて以降ずいぶん安くなりました。投資相談する必要がなく、売買するだけならネット証券を使えば相当安くなります。デイトレーダーと言われる人たちが短期売買で利益を挙げられるのもこの手数料の大幅な低下がもたらしたといってもいいでしょう。
問題は投資信託です。投資信託の手数料は高いものと安いものとの差が極端にあります。まず投資信託を購入する時の販売手数料ですが、高いものだと5%くらい払わなければいけないものもあります。さらに買付手数料以外にも信託報酬といって、保有している資産に対してかかる手数料があります。これも投資信託によってかなり上下があり、高いものは年間2%近いものから安いものは0.2%以下といったぐらいのレベルまで10倍近い開きがあるのです!どうしてこんな差が出るのかをお話するととても長くなるので、また別の機会にしますが、要は投資信託を使って運用を長期におこなう場合、この手数料の差がかなり大きなものになってきます。
少し例をあげてみましょう。仮に22歳から60歳まで、すなわち大学を卒業して社会人になってから定年までの38年間、コツコツと毎月1万円ずつ積立で投資信託を買っていくとしましょう。積立月数は38年間×12ヶ月で456ヶ月。毎月1万円ですから、累計の積立金額は456万円になりますね。これが運用する元本です。仮にこのお金で信託報酬が1.5%の投資信託を買い続けたとすると、38年間に支払う手数料の累計額は約133万円になります。ところが、信託報酬が非常に安い投資信託、仮にここでは0.2%のものを買い続けた場合、なんと手数料の累計はたった18万円ほどです。その差は何と115万円。元本が456万円ですから何と両者の手数料の差は元本の約四分の一にもなるということです。率ではピンとこなくても金額になるとその差は歴然です。どうです?こんなに差があるとは思っていなかったでしょう?それにそもそも投資信託を購入する時に金融機関の窓口で「これからはこの投信がいいですよ」と勧誘を受け詳しく説明を聞いたけれど、どうもよくわからないままに勧められる投信を買ってしまったという人もいるのではないですか?
また、中には「手数料は高くても要するにそれを上回る利益を挙げてくれさえすればいいのだ」とおっしゃる方もいます。確かにそれはその通りです。おっしゃる通り、それを上回る利益を挙げ続けてくれば、です。ところがいくらプロが運用していると言っても確実に一定の率を上回るリターンを上げ続けるなどということは極めて困難です。これに対して手数料だけはマーケットとは関係なく運用成果に着実にマイナスをもたらす要因となるわけですから、どの投資信託を購入するかを検討する場合の重要なポイントになってきます。少なくとも購入する前には手数料がどれくらいあって、他と比べてどれくらいの水準なのかを調べておくことは欠かせません。手数料だけが投資信託を選ぶ際のポイントというわけではありませんが、かなり大きな要素であるということは忘れないでほしいものです。