ライフプラニング、或いはライフプランという言葉ほど、様々な使われ方をしているものはないのではないかと思います。また、多くの企業でも社内で「ライフプランセミナー」というのが行われているようですが、その内容はかなり異なっているようです。ある会社は、定年前に年金の説明や健康の話などをする機会を「ライフプランセミナー」と称しているようですし、(大体、そんな年齢でライフプランを考えるのは遅いと思うのですが)企業によっては、本人のキャリアアップのためのセミナーを「ライフプランセミナー」としている場合もあります。(これがなぜライフプランなのか、よくわかりませんが)
あと、よくあるのは金融機関が「ライフプラン診断」と称して家族構成や年収等のいくつかの項目を記入させ、その結果、「将来のキャッシュフローがこうなりますよ」という状況を見せるものです。これはWEB上でシミュレーションとして行うツールもありますが、ほとんどの場合「このまま行くと将来は必ずお金が不足しますから、今からもっと貯蓄しましょう」あるいは「もっと保険に入りましょう」という類の結論に到達します。
これは、こういう類の診断が、金融機関にとって営業促進のための手段だからです。では、そもそもライフプラニングというのは何を意味しているのでしょうか?
私は、ライフプラニングを一言で定義すれば、「人生における様々なライフイベント(結婚、住宅取得、老後の生活等)を考え、自分がしたいと思う生活を確立するための経済基盤を設計していくこと」ではないかと思います。
ライフイベントは人によって異なります。よく人生の三大出費と言われる「住宅取得」、「子供の教育」、「老後の生活」についても、親の家があって、そこに住める人は住宅取得という大きな出費は発生しませんし、最近では、結婚しない、或いは結婚しても子供がいないというケースも多いため、これも大きな負担となる子供の教育についても必要のない人が出てきます。それに、“自分と家族がしたいと思う生活”は人さまざまですから、ライフスタイルによって必要な費用の額も違ってきます。
各種の診断ツールは、あくまでも標準的なものしか用意することができませんから、この「自分がしたいと思う生活」という視点が決定的に欠けています。したがって、ライフプランを考えるには、金融機関が提供する「ライフプラン診断」をそのまま鵜呑みにするのはあまり意味が無く、自分で考えることが必要です。
自分で考えるといってもそれほどむずかしいわけではありません。自分の今の年齢から考えてここから将来起こり得ると考えられる人生の出来事とそれにかかる費用を想定します。さらに「ねんきん定期便」で将来の年金受取り予想額、サラリーマンであれば退職金や企業年金の金額の把握、そして今の自分の資産と負債(住宅ローンや教育ローン等)を計算し、加えて毎年の収入と支出をおおまかに出しておけば、ざっくりとした将来の資金の過不足は出てくるはずです。
もちろん、人生は予期せぬ変化が起こるのは当たり前ですから、ここで想定した金額が将来もずっと変わらないとは限りません。何か大きな変化が生じた時や、そういう可能性が出てきた時は、見直すことも大切です。
私は、ライフプランを考える場合に一番大切なことは、「自分や家族がしたいと思うこと」をきちんと考えておくことだと思います。人生の目的は、お金を貯めることではなく、楽しく豊かに過ごすことです。もちろん、そのためには経済的基盤をきちんと確立しておくことが大切ですが、ライフプランを考え、それに従ってお金を貯めることは、あくまでも豊かに人生をおくるための手段にしか過ぎません。
金融機関の提供するライフプラン診断をそのまま鵜呑みにして勧められるまま、貯蓄や保険に励むのではなく、自分にとって何が必要なのかを考えることのほうが大切ではないかと思います。