百歳以上の長寿者のことを百寿者というそうです。百寿者の数は年々増加しています。
この図を見るとこの半世紀の間に百寿者の数は300倍以上に増加しています。まさに高齢化社会を象徴していると言っても過言ではありません。
なかでも女性の百寿者の割合は群を抜いています。生物学的に見て女性の方が優れた存在であるというのはこの事実からも明らかなのかもしれません(笑)
このグラフと次の表は、一般社団法人「中高年齢者雇用福祉協会」が出版している「ないすらいふ情報」からピックアップしたものですが、百歳以上の高齢者数は特に2000年に入ってからの増加が著しいという傾向があります。もちろんこの中には少し前に「年金不正受給」で話題になった、本当は亡くなっているのに届けられていないというデータが混じっているかもしれませんが、出所が厚生労働省の「百歳高齢者に対する祝状及び記念品の贈呈について」という内容なので、それほどでたらめな数字とは思えません。
ところが、この表を見てみると、面白い事実に気が付きます。やや古いデータなので現在も実態がどうか?ということになるとやや疑問はありますが、1972年から2000年までの30年間で百歳以上高齢者の寝たきり率は何と倍になっており、50%にも増えています。
一方では、“かなり活発に動く”という人の割合も倍近く増加しており、どうやら百寿者の傾向というのは明らかに二極化しているという傾向が出ているようです。個人の立場で考えてみると、理想はいわゆる“PPK”(ピンピンコロリ)と言われるように死の直前まで元気で活動して最後は周りに迷惑をかけずにコロッと逝きたい、ということでしょう。そのために健康管理をきちんとしようということで、個人の場合はここで話が終わります。
ただ、社会全体での問題ということになると、これはもう少しさまざまな問題が出てくることになるのです。それは医療費の増加と健康保険制度の問題です。
一般的にマスコミでは年金問題の方が大きく取り上げられています。ところがこの年金問題には誤解が山ほどあって、私から言わせるとずいぶん間違った認識がたくさんあります。もちろん今の公的年金制度が万全であるとは言いませんが、少なくとも今すぐに制度が破綻するとか、年金がもらえなくなるという話ではないのです。
この問題を詳しく論じると本が一冊書けてしまうので、今回は触れませんが、私は将来的には主に以下の理由でそれほど年金問題は心配することがないと思っています。
1.最大の年金受給者層である“団塊の世代”が年金を受取るのは平均するとあとせいぜい20年程度(現実にマクロ経済スライドも2023年までの時限立法です)
2.老人に支給された年金は欧米の老人のようにパァーっと使ってしまえば別ですが、ほとんどは地味な生活なので亡くなった時点ではかなりお金が残っており、そのお金は次世代に移転される。(一説によれば、日本人が亡くなった時の金融資産は平均3,000万円と言われている)あるいは、相続税という形で国庫に戻ってくる(相続税強化の動きはこれかもしれません)ということになります。
ところが、医療費というのは、ブラックホールで注ぎ込まれたものが再生産に結び付くことはあまりありません。この図にあるように国民医療費の国民所得に占める割合は年々増加しており、2025年には医療費が81兆円を超える(国家予算なみです)予想です。また、百寿者(百歳以上高齢者)の数も現在の5万1千人程度が、2050年には68万人に急増するという予測もあります。
百寿者が増えるのは結構なことですが、さきほどの表にもあるように、寝たきりの方もかなり増加しているのです。これらの問題を考えた場合、我々が将来心配しなければならないのは年金よりも医療の方ではないかと私は考えています。
もちろんだからと言ってこれもすぐに医療保険制度が破たんするということではないので、今すぐ医療保険への加入を考える必要はないと思います。ミニマムな形での医療保障というのは保たれると思いますが、ある程度の金銭的な備えは必要と言えるでしょう。
もちろん健康を維持することが最大の対策であることは言うまでもありません。