ヒゲおじさんの独り言

分散投資は役に立たない?

分散投資してもみんな下がったじゃないか!

分散投資は効果なし

前回、分散投資の意味についてお話をさせていただきました。その中で私が考える最も重要な分散投資は資産の分散であると申し上げました。もちろんこれとても絶対ということではありません。どう分散するのか?はその人の運用戦略の問題であり、必ずしも伝統的な4つの資産に分散することが正しいということを言っているのではありません。
 ただ、最近では「分散投資をしても意味がないのではないか?経済がグローバル化しており、つながりが以前よりは強くなってきているのだから、何か大きなマイナス材料が出た時には連動して下がることも大いにあり得る。例えばリーマンショックの時などはみんな同じように下がったではないか!したがって分散投資が万能というわけでない」という意見も出てきています。この意見は一見もっともなように思えます。事実リーマンショック時のような時には、株式で言えば、先進国、日本、新興国とほぼ世界的に株が同時に下がりました。これはなにもリーマンショック時に限りません。古くは1973年のオイルショックや、1987年のブラックマンデーの時にもほぼ世界中の株は同時に下落しました。でもこれらの事実だけをもって、果たして本当に分散投資は意味がないと言えるのでしょうか?今回は分散投資についてもう少し考えてみましょう。

相関係数?

分散投資が効果を出すためには相関係数が大切です。相関係数はマイナス1からプラス1の間を動くのですが、プラス1というのは正の相関の状態で、例えばAとBという二つの資産がプラス1であれば、AとBは同じように価格が上下するということになりますから分散投資の効果は全くありません。逆にマイナス1の場合は片方が上がれば片方は逆に下がるということですから、これによって分散投資によるリスク軽減効果というのは出てきます。またゼロというのは相関関係がなく動きがバラバラということなので、この場合も一定の分散効果はあると考えていいと思います。ということは相関係数が0からマイナス1の資産同士を組み合わせれば、分散投資は効果があるということになります。

ところが困ったことにこの相関係数というのは異なる資産の値動きの間では常に一定ではありません。なぜならもともと市場で値段のついているものはその市場に参加する多くの人の心理によって左右される部分が大きいため、オイルショックやリーマンショックの場合には理屈を超えて一斉に同じ方向に動くことも起こりうるからです。

図1

図2

短期と長期では異なる?

ところが、少し長い期間をとって眺めてみると全ての資産が常に相関係数プラス1近くにいるなどということはありません。リーマンショックの時でも図1のように一時は同じように下落しましたが、その後の日米の株価の動きは異なる要因によって明暗が分かれていますし、図2では同じ日本の市場でも株式と債券で全く逆の値動きをすることもあります。これはある意味では当然のことと言えるでしょう。日本とアメリカ、そして新興国はそれぞれ抱えている問題や経済の環境は異なるわけですから、同じ事象が起こってもネガティブに考える市場とポジティブに考える市場という違いは必ず出てきます。

また債券は基本的に金利動向によって動くのに対して株式の場合は株価形成に与える影響のうち、企業業績の占める割合が大きくなりますので、当然動きが異なるのは当たり前であり、相関係数がずっとプラス1のままなどということはあり得ないわけです。ただ、ごく短期的には不安心理の増幅による暴落や逆に全面高ということも起こりうることは事実ですから、確かに短期で売買して利ザヤをとろうと考えると分散投資をしていても何の役にも立たないということは言えるかもしれません。
でも多くの一般的な投資家は長期の資産運用を考えていますから、そういう場合にはやはり異なる資産を複数持っておくことは一定の分散効果があると考えた方がいいだろうと思います。