ヒゲおじさんの独り言

(3)年金、何が不安?

年金がわかりにくい最大の理由

マスコミに登場する年金に関する記事を見てみると、やたら不安を煽るようなものが目につきます。
ところが、これらの記事を読んでみても結局、何が不安なのか、何が問題なのかが、あまり明確に解説されているものがありません。年金というのは、とにかく難しいというイメージがあるのですが、私は年金を一番わかりにくくしているのは「年金」という言葉なのではないかと思っています。

 サラリーマンの場合、老後に受取る年金は大きく分けると、「国からもらう年金=公的年金」と「会社からもらう年金=企業年金」の二つになります。これらは同じ年金という名前がついていても、考え方はやや異なります。公的年金は社会保障制度ですから、国や企業や個人がそれぞれお金を出し合って、老後の生活をまかなう、言わば相互扶助的な意味合いがあります。これに対して企業年金は企業の退職給付制度ですから、報酬の後払い的な性格を持っており、原則は会社が負担するものです。したがって、目的は同じ「老後の生活のための資金作り」であっても、しくみは異なっているのです。

 これがアメリカなら、公的年金はSocial Security 企業年金はBenefitというぐあいに全く別の名前で、且つ名が体を表わしていますから、誰でもその違いが理解できます。ところが日本の場合、サラリーマンの公的年金には「厚生年金」という名前の年金があり、更にややこしいことに、企業年金の一つに「厚生年金基金」というのもあります。これでは何のことかわからなくなるのも無理はありません。

年金のどこが問題なのか?

年金不安

さて、これら二つの年金、公的年金と企業年金では、その問題点が異なります。一言で言えば、公的年金は「払う人が少なくなる懸念」、企業年金は「予定通りにいかなくなる懸念」ということです。言うまでもなくわが国は少子高齢化が進みつつあります。公的年金はわかりやすく言えば、現役世代が年金の掛金を払い込み、リタイア世代がそれを受取ることによって世代間で順送りするしくみですから、少子高齢化が進み、払う世代(若い人)が少なくなり、受取る世代(高齢者)が増えてくると、今の受取金額、受取開始時期が維持できなくなるかもしれないという不安が出てきます。
 一方、企業年金の場合、社員が退職後に受取れるよう、会社が積み立てて運用していくしくみなのですが、長期に亘る低金利や株式市場の低迷などで、当初の予定通りに運用できなくなった結果、会社が追加的な積立をしなければならなくなることが出てきます。「そんなこと、会社が責任を持ってやってくれるのは、当たり前じゃないの!」と思われるかもしれません。それは確かにそのとおりですが、その結果、財務内容が大きく悪化し、会社の屋台骨がゆらいでしまうようなことになれば、最悪の場合、企業の存続、自分の雇用にまで影響しかねないという心配も出てきます。

企業年金の不安解消は・・・?

こうした問題に対して、例えば企業年金では、「確定拠出年金」という、言わば会社が社員に対して年金の積立金を前払いして、そのお金を社員が自分で運用し、税の優遇を受けることができるという制度が急速に広がってきています。この制度であれば、自分で運用しなければならないという点はあるものの、会社は掛金を出すという負担だけで済みますし、社員にとっても、会社がどうなっても既に積み立てられた自分の年金部分は確保されるという安心感があります。また、公的年金にしても長期的には問題点はあるものの、決して今すぐ破綻するなどということではありません。

「年金が不安!」というのは、漠然とした知識しかなく、何が問題か良くわからないから不安なのです。問題点を整理してみると、何が不安なのかがはっきりしてきて、どう対処すればいいかわかってくるものです。