2011年に起きた東日本大震災において、当時、しばしば“想定外”という言葉が使われました。過去にほぼ類を見ないような大規模な津波や、原発が直面した全ての電源が使えなくなるというような事態等、通常では起こりえないようなことがいくつも起こったことは事実でしょう。
こうした事態で私が想起するのは、資産運用の世界においてもこういったいわゆる“想定外”のことが起こりうるのか?起こった場合はどうすればいいのか?ということです。
最近では、リーマンショックというのがありました。この時も“想定外”のことと言われ、“百年に一度の危機”とも言われました。ところが、このグラフを見てください。1973年から、リーマンショックが起こった08年の10月までの日経平均のチャートですが、同じぐらい下落したことは何度もあります。なぜ1973年からかというと、理由は単純でして、その翌年に私が証券会社に入社したからです(笑)つまりこのチャートは私が勤めていた37年間のうちの35年間を表したチャートなので、いわば私が実体験してきた歴史なのです。現実に同じぐらいの下落は少なくとも4回は経験していますし、少し前にさかのぼってみると「ITバブルの崩壊」や「ロシア危機」など、当時も“想定外”と言われたことがたくさん起こっています。100年に一度どころかせいぜい10年に一度くらいはこういうクラッシュは起きているのです。
つまり、“想定外”という事象はしばしば起こりうるということなのです。もちろんこうしたクラッシュが、“いつ起こるのか?”、“どれぐらいの規模なのか?”ということは誰も想定することはできません。したがってそういう意味では“想定外”なのですが、想定外のことが起こりうるということを“想定”しておくことはできますし、それはとても大切です。 そういう意味では地震や津波などの自然災害とマーケットの変動による損失というのは非常に良く似ています。
こうした災害は「いつ起きるのか?」「どれぐらいの規模のものなのか?」は誰にもわかりません。常にこうした災害は突然やってくることが多いからです。要は、こうした災害(マーケット変動)の時期や規模を予想することは極めて困難なのですから、もしそういうことが起こったとしてもどうすれば被害(損失)を最小限に食い留めることができるかについて普段から想定し、対策を立てておくことが大切なのではないかということです。
地震や津波などの突発的な災害からほぼ100%逃れる方法は二つしかありません。ひとつは神がかり的な予知能力でもって当該地域から事前に逃げること。そしてもうひとつは核戦争が起こっても大丈夫なくらいに家を要塞化して一歩も外へ出ないことです。こうしたことは多くのみなさんから一笑に付されることでしょう。あまりにも現実的ではなく、そんなことはできっこないからです。
ところが資産運用の世界では同じような非現実的なことが平気で考えられているのです。「予知能力」というのは、市場の変動を事前に予測して正確に売り逃げるということです。そんな予知能力を期待するのはあまりにも非現実的ですよね。それに「家を要塞化する」ということは資産運用に置き換えれば預金等、価格変動が一切無い資産のみで運用するということですが、預金だって将来的にはインフレという別な側面からのリスクもありえます。ことほどさようにあまり現実的ではないことを、実は資産運用の世界では何とかできないだろうか?と考えられているというわけです。
ではこういう想定外の出来事が起きるということを前提として考えた場合、どういう準備をしておけばいいのでしょうか?続きは来週にしたいと思います。