ヒゲおじさんの独り言

(2) 給与天引きの底力

資産形成の王道は?

書店に行くと、財産作りのためのハウツー本の類が随分たくさん売られているのが目につきます。特に最近はアベノミクス効果もあって、市場が好調なだけに、「株で1億円作る方法」だの、「ゼロから10億円を作るには」といった、あたかも“こうすればお金持ちになれます!”といった派手なトーンが、かなり増えてきているように思えます。

こうした本に書いてあることを読んでみると、大きく分けて二つの流れがあることに気がつきます。一つは、「確かにそうだが、実際にはそんなことができるんだろうか?」というタイプの話。もう一つは、「それはわかってるけど、それができないんだよね・・・」というタイプの話です。結果としてどちらも納得性のある話ではありながら、実行に移すことができないという内容のものばかりでして、考えてみれば、誰もが簡単にできることなら、誰もがお金持ちになっているはずです。“こうすれば良い”というのと“できる”というのは同じではありません。ところが、特別に何も難しいことをやらなくても、サラリーマンなら簡単にできる資産形成の王道があります。それは“給与天引”です。

給与天引きはサラリーマンの特典

考える

前回のコラムで、サラリーマンならではの優位性をいかすべきだということをお話したことがありましたが、給与天引はまさにサラリーマンとしての最大の優位性だと言えます。
財産作りのステップは、よく“ためる”、“ふやす”、“もうける”、“まもる”の四段階だといわれます。最初のステップである“ためる”ために最も重要な要素は、なんと言っても利便性です。面倒なことをしなくても自然にお金がどこかにキープされていけば、気がつくとたまっていた、ということになるのです。給与天引は、給料が振り込まれた時にはもう既に引かれています。最初から、なかったものとして考えるわけです。
普通の人にとって、お金というのは、あったらあっただけ使ってしまいがちです。給料を貰ったら、毎月の生活費をきちんと計算し管理して、余ったお金を毎月欠かさず銀行や郵便局へ持っていけるということが出来る人がいたとしたら、その人は、よっぽど意思が強いか、あるいは性格が暗いか、どちらかじゃないでしょうか。(笑)こんなコラムを書いている私も実は、全く計画性がなく、今までの経験上、給与天引の方法以外でお金が貯まったという経験は全くありません。

“簡単な入金”と“難しい引き出し”

では、なぜ、給与天引が有利なのでしょうか?お金を貯めるのに大切なポイントというのは、実にシンプルでして、①入金が簡単にできること、②出金がやりにくいこと、のたった二つしかないと思います。
給与天引の場合、自分でアクションを起こさなくても会社の給与課が代わりに入金手続をしてくれ、しかも残高管理までやってくれます。入金の仕組みとしては、これ以上に簡単なものはありません。銀行の自動引落しでも、自分で残高を管理しておかなければならないのに対して、毎月必ず支払われることがわかっている給料からの引落しですから、何の手間もいらないわけです。逆に引き出す時は、制度にもよりますが、けっこう制約のあるものが多いようです。銀行のようにキャッシュカード1枚で簡単にというわけにはいかず、所定の書類を記入し、場合によっては、部長や課長のハンコまでもらわなければならない、(これが結構わずらわしいですよね)さらに即日お金が出ることも稀で、1週間とか2週間という時間がかかる、等々のことを考えると、今回はちょっと引き出すのをやめておこうかという気になってしまいます。

いかがでしょう、給与天引による会社の制度貯蓄というのは、自然にお金が貯まりやすい仕組みになっていることがおわかりいただけましたか?
あまり難しいことを考えたり、現実離れした資産形成本に読みふけるよりも、まずは会社のいろんな天引制度を気軽に利用してみるのも、サラリーマンの資産形成の大きな一歩になるのではないかと思います。